プレゼントにはドライヤーを。
『グリーン・マイル』や『スタンド・バイ・ミー』の原作者としても有名なスティーブン・キング氏。
彼は小さなころから書くことが好きで、昔からよく物語を立ち上げていたようです。(そのあたりは29歳で「いきなり」小説を書きはじめたハルキ君とはずいぶん違いますね。)
スティーブン氏には子供がいて、アルコール中毒経験者ですが、そういうところもハルキ君とは違います。
しかしふたりとも結構な数の作品を世に送り出しているという点や長きにわたり第一線で活躍し続けているという点においては同じと言っていいと思います。
ハルキ君は最初の2つの小説(『風の歌を聴け』と『1973年のピンボール』)を千駄ヶ谷の部屋のキッチンで書き上げましたが、
スティーブン氏も同じように、キャンピングカーのランドリー(洗濯機置場)で小説を書いていました。このあたりも、ふたりには近いものがありますね。
そして、なにより彼らふたりに共通するのは「奥さんが最初に彼らの作品に目を通す」という点でしょう。(そのあたりは伊坂幸太郎さんも同じですね。)
スティーブン・キング氏がデビューして一気に人気作家になった作品である『キャリー』は、
スティーブン氏が「この作品はダメだ」とクシャクシャにしてゴミ箱に捨てた紙を奥さんのタビサさん(愛称:タビー)が拾って読んで、「これは売れる作品になるわ」と断言したことがキッカケです。
そう考えると作家にとって奥さんの存在は大きいのかもしれませんね。
スティーブン氏がその『キャリー』のペーパーバック権が売れて、はじめて「もともな」金額(20万ドル(1970年代はじめのこと))をもらうことが決まったとき、
彼は嬉しすぎて、奥さんのタビサさんに「なにか買わねば」と思い、夜遅くに開いていたドラッグ・ストアに飛び込んで精一杯「高価なもの」を買おうとしました。
しかし、所詮はドラッグ・ストア。結局彼がそこで買ったものは「ヘアドライヤー」でした。
家に帰ったスティーブン氏がそのドライヤーを渡し、事の一部始終を彼女に話すと、彼女はその場で泣き崩れたそうです。とても素敵な話ですね。
僕は「そのとき」、大切な人に何を買うんでしょう?
そのとき家の近所にもう少し「まとも」なものが売っている店があるといいんですけど...。
そんなことよりもなによりも、まずはいい作品を書かねば、という感じですね。(Essay 11 おわり)
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