天使と悪魔とランニングと。
長編小説を書いているときには月200km走っていた僕も、最近はすっかりエッセイモードでゆるゆるしているので、
その距離は6割程度に落ちていて、月120〜130kmくらいしか走っていません。
ところで、昨日の東京は雨でしたね。基本的に僕は雨の日は走りませんが、昨日の夜は家を出たときには小雨だったので、ひとまず走りはじめたのです。
せっかく着替えたんだし、ストレッチもしたし、部屋のなかでそれなりに葛藤もしたんだから、走らないなんてもったいない。そんな感じです。
僕は基本的にそんなに走ることに対してモチベーションが高くない人間なので、走る前はよく億劫になります。
「別に今日くらいいいじゃない。明日もあるんだし」と悪魔くん。
「いやいや、今日は走るって朝から決めてたじゃない。今日走らなかったらきっと、君は明日も走らないぞ」と天使さん。
僕はランニングウェアに着替えてから家を出るまでにストレッチをしながら、たいてい本を読んでいるんですが、
ひとしきりのストレッチも終えて、二宮金次郎スタイルで本を立ち読みしつつ、そんなふうに葛藤をしたのちに、もぞもぞとランニングシューズを履いてそろそろとスタートします。
そんなに嫌ならやめればいいじゃない。とあなたは言うかもしれない。それはそのとおりだし、僕も本当にそう思います。
でも基本的に僕に選択の自由なんてないんです。ひとまず小説家として生きていきたいのならば、走らなければいけないんです。
だからいつもぶつぶつと言いながら、それでも小説家という生き方に降参して走り出すのです。
昨日は小雨のなか「えいやー」で走り出したんですが、そのうち本降りになってきて、そうなると僕の弱々しい心のなかではまた悪魔くんと天使さんが会話をはじめるんですね。
「今日は4kmくらいで走るのやめちゃえばいいじゃない。雨なんだし」と悪魔くん。
「いやいや、今日は7km走ると決めていたんでしょ? どうせ汗で濡れるんだし、変わらないよ」と天使さん。
「でも、ほら、風邪を引いたらマズいじゃない」と悪魔くん。
そんな葛藤を繰り返しながら、最終的には「でも、まあ小説家として生きたいんだろ?」と自問して、渋々7kmをずぶ濡れにながら走りきったのでした。
なんでこんな生き方を選んでしまったんだろうなぁ、とときどき思ったりします。
後悔はないけれど、こういう自分が面倒にもなることもあります。いいんだか、わるいんだか。今の僕にはまだわかりません。
そして悪魔くんを手なずけながら僕はまた明日も走るのでしょうね。まったくもぉ。うん。でも仕方ないんです。(Essay 10 おわり)
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