いろいろな傷。
手がすべって包丁でつけてしまった指の傷。
ばんそうこうが剥がれて、うずいた指の傷。
数日経てばきっと、忘れてしまうだろう、僕の傷。
いつか誰かと言い争って出来た心の傷。
ときどきその光景がフラッシュバックして、
僕はそのたびにそこにまだ傷があることを知る。
君のなかにある誰かがつけた傷を、
いつか僕が刺激して、君は痛みを思いだす。
僕のなかにある誰かがつけた傷を、
いつか君が刺激して、僕は痛みを思いだす。
僕たちは、深い部分では痛みで繋がっているのかもしれない。
でも悲しみに暮れてばかりはいられないから、
なにごともないように笑って暮らす僕らです。
傷があるから君はそんなふうに笑えるし、
傷があるから君は人に寄り添えるのだと、
君の笑顔を見ていると、そんなふうに感じる。
春が来るたびにうずく、僕らの傷。
いつかそれは痛みを伴わない、ただの痕跡になるだろう。
「いつかのその日」も、君といられたら良いと思う。
そう願い、そう誓い、今日という日を静かに閉じる。
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